修繕計画をたてよう 長期安定経営のために オーナーの賃貸住宅経営の目的は、長期にわたり安定収益を確保することです。そのために大切なことは、入居者に“安全”で“快適”な住まいを提供し続けることだと思います。 一方で建物設備は、完成した直後から老朽化が始まります。 入居者のニーズも時代の流れの中で変化していきます。常に賃貸住宅に住む人の希望や動向を意識して、必要に応じて修繕維持を実施していかなければ、安定収益確保に支障をきたすことになります。 たとえば新築の木造アパートがあったとします。オーナーとしてはこれから30年間このアパートに充分働いてもらおうと期待するでしょう。“充分働く”とは、30年の間に賃料をしっかり稼いでもらうということです。 ところでアパート設備の中でユニットバス(UB)があります。 一体型の浴室のことですが、数ある設備の中でも入居者の注目度が大きいものです。このUBですが30年間取り替えなしでアパートは維持できるものでしょうか。浴室としての機能(お湯をためて身体を洗う)が果たせるかどうかと、入居者の満足(清潔感、使い良さ)が維持できるか、ということです。 いろいろ意見はあると思いますが、仮に、取り替えなしでは入居者の満足は得られにくい、と判断したとします。30年間で取り替えをするとしたら、いつの時点が一番効率がいいでしょうか。小学生でも分かる質問ですが「15年経ったとき」ですね。丁度半分過ぎたときに替えればUBはかなり良い状態で維持でき、入居者の満足も得られるでしょう。ところが、築15年のアパートのオーナーに「そろそろUBを替えましょう」と提案すると「バカ言うな、まだ使えるじゃないか」と言われてしまいます。確かに15年では「まだ使える」状態ですから・・。しかし30年の期間で物を考えると「このままあと15年間もちますか」ということになるのです。20年目に替えたら2代目UBの活躍の場は10年しかありませんし、初代UBの15年目から20年目の間に入居者の不満をかう恐れがあります。不満が出れば空室発生につながってしまいます。 修繕計画をあらかじめ立てておく大切な理由はここにあります。目先ではなく修繕のタイミングとして一番効率の良い時期を選ぶために、中長期の修繕計画が役に立つのです。 修繕資金を準備する 修繕を行うときに問題になるのが資金です。空室が増えだして収入が減ったときに「修繕の金が必要」と言われてもポンと出せるものではありません。また「お金をかけたら本当に部屋がうまるのか」という疑問もあるでしょう。 さて資金のことですが、まさに修繕計画を作成する目的のひとつに「資金の準備」があります。15年後にUBの交換が必要だから、その資金を15年かけて準備しよう、ということです。 具体的には、最初の5年〜10年間に「鉄部の塗装」「室内設備(エアコン、風呂釜など)の修理」「配水管の洗浄」等の修繕が必要となります。 つぎの11年〜15年の間には「外壁・屋根の塗装」「鉄部の塗装と防水」「土台の坊蟻処理」「エアコン、風呂釜の交換」「浴室厨房設備の部分交換」「配水管の洗浄」等が必要です。 その後も5年ごと30年目まで、必要な修繕項目とその金額を算定したものが修繕計画です。木造2DKの場合で30年間に必要な修繕費が一部屋あたり200万円という試算もあります。年間で6.5万円、1ヶ月で5500円という計算になります。もし家賃が8万円なら収入の7%程度を修繕のために貯めておく必要があるということです。 この資金準備計画を新築の時に立てて貯蓄しておけば修繕実施の時に「資金がない」ということは避けられるのですが、多くの場合そのような計画が行われていないのが実状です。 では、どうするか。 まず現時点での建物設備の点検を行います。人間の健康維持に定期健康診断が必要なように、賃貸物件にも定期点検をおこなう必要があります。もし不健康な人間が健康診断を受けたらどうなるか。応急処置が必要な場合はその処方箋がくだされます。場合によっては即入院ということもあるでしょう。多くの場合は薬と治療が施され食事や運動等の生活習慣の改善が指示されると思います。建物設備も同様で「すぐに対処しなければならない修繕」と「これから経年に応じて必要になる修繕」を洗い出すことになります。そして必要な資金を算定します。新築と違って残された期間が30年ではないので、全部交換より一部交換で済ませられないか、修理で対処できないか、支出をなるべく抑えて効果のあがる修繕方法を選択するのは言うまでもありません。 資金面では「設備機器のリース」活用も検討に値すると思います。修繕項目の中で大きな費用を要するのは、外壁・屋根塗装など構造本体の修繕と、エアコンや給湯器など設備改善の2つです。この設備改善にリースを活用する方法があります。アパート経営者などの事業者だけが利用することができます。メリットとして @リース料金全額を経費計上できるなど税制面で優遇されています。 A一度に大きな現金出費をせずに、毎月のリース料支払いになりますから、大きな設備改善工事を資金手当なしで実施できます。 B一般的にリース期間中の故障修理代は無料です。 リース期間は4〜8年、期間満了後も設置機器の使用は可能です。ちなみに100万円くらいの設備改善工事の場合、8年のリースを活用すると毎月の支払いのリース料はおおむね1万5000円程度になります。 日常点検とグレードアップ工事 賃貸物件の美観を保つためには定期清掃も欠かせません。できればゴミの収集日に合わせて週3〜4回の清掃が望ましいところですが、最低でも週1回の日常清掃が必要です。 また、時代の変化に対応して行う改善をグレードアップ工事と言います。たとえば、以前は和室主体の間取りが一般的でしたが現在は洋室が好まれますから、間取りの和洋変更が必要になっています。今後は世帯あたりの人数が減る一方なので、広いスペースが求められます。3DKより2LDKが6畳より8畳が望まれています。エアコンもファミリー物件には無くてもよかったのですが、現在は必須設備です。バランス釜タイプの浴室も現在は好まれませんから改善が必要です。 グレードアップ工事は、時代の変化により生じるもので、工事方法もさまざまで予測はできませんから「修繕計画」に含まないのが一般的です。この分の資金準備にも余裕を持たせておきたいところです。 草加市の不動産情報 |