定期借家契約A


  前回は定期借家制度の活用法のうち「滞納対策」にスポットをあててみました。 5年が経過した同制度には見直しの論議が多くあり、提言の中には「事業用借家制度の創設」という案もあるようです。さて今回はのテーマは「不良入居者の追い出し」「保証人不要」です。

  
 定期借家契約は、物件の環境や入居水準を改善することにも利用できます。不良入居者に対して再契約を拒否できるということは、家主側だけでなく入居者側にとっても大きなメリットとなるのです。つまり定期借家の物件は、優良な入居者を保証するものとなるのです。これは入居を促進する上で大きな武器となります。

契約書の中に、どのような場合に再契約を拒否するのかという項目が必要で、ここにある程度の内容を書かなければなりません。家賃の滞納を3回以上あるいは2ヶ月以上連続した場合、ゴミ出しや騒音などの入居規則を破り3回以上注意を受けた場合、入居者の4分の3以上が拒否に同意した場合、などの具体的な記述です。家主と入居者、入居者同士の信頼関係を損なうような行為が対象となります。ルールを守ってまともに生活したいと望む入居者にとっては、定期借家はうとまれるどころか歓迎されています。入居者にとってのメリットをどれだけ説明できるか次第なのです。

また、契約者本人に問題がなくても、保証人に疑問が残る人、勤続年数が短い人、転職が多い人など、従来なら心配で入居を断るようなケースでも、定期借家契約ならリスクをある程度は回避することが可能です。その場合は契約期間を1年にしたり、物件や入居者によって契約期間を変えて対応できます。家賃を前払いしてその期間分だけの契約を締結することもできるのです。

近年、保証人を頼みづらい、または保証人になる人がいない、という入居希望者が増えています。そこで登場しているのが保証人不要のシステムです。保証人を付けない代わりに、連帯保証人代行のサービスに加入させるなどしてリスクを回避しています。

しかし、それでもやはりいざというときに保証人がいないのは家主さんにとって不安なものです。連帯保証人代行サービスは2年契約が一般なので2年ごとに更新する必要がありますが、更新時に家賃滞納していると、代行サービスから保証契約の更新を拒否されるリスクがあります。そのために、保証人不要物件の契約を定期借家契約にするのです。代行サービスから更新を拒否されたら、家主も再契約を拒否すればいいのです。そのためには、半年前に再契約拒否の通知をするか、364日以内の契約期間にしておく必要があります。

賃貸住宅が供給過剰と言われる中、「保証人不要」は入居者獲得の一つの対策になり得ます。その場合、定期借家契約と連帯保証人代行サービスを組み合わせればかなり高い確率でトラブルを回避できます。また、敷金・礼金ゼロなどの物件も同様の効果が期待できるでしょう。


Q 定期借家にすると、賃料を下げなければならないと聞いたのですが。

A 定期借家契約だから賃料を下げなければならないということはありません。「不良入居者の追い出し」の説明にある通り、入居者のメリットを説明できるなら下げる必要はないのです。
ただし、非再契約型で、契約期間が2〜4年限定の場合は、期間に応じて下げる必要が出てくるものと思われます。限定期間でも可能な特定入居者を探す必要があるからです。

また、再契約型の場合でも、立ち退き料を負担する可能性がないため、その分、賃料を安く設定できるという主張もあります。従来の普通借家契約は立ち退きの際に莫大な立ち退き料を払わなければなりません。そのため、将来発生するリスクに備えた分を賃料に上乗せしてきた、という考えです(空室が深刻なために上乗せする余裕などないケースが大半だと思いますが)。定期借家ならそのリスクが回避できるので、その分を賃料から除くことができる、という主張です。いずれにしても、賃料を下げずに契約する場合でも、再契約のときは、入居ルールを守ってくれた訳ですから、若干の賃料値下げを提示しても良いのではないでしょうか。

Q 中途解約できるのですか。

A 貸主からはできません。借主からの中途解約は条件付きで認めています。200u未満の住宅の場合は「転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情」が生じた場合には1ヶ月前までの解約申し入れをすることで中途解約が可能となっています。1ヶ月よりも長い申し入れ期間を設けても、借主に不利な特約は無効となります。また、「中途解約の場合は3ヶ月分の賃料を支払うこと」などの特約を定め、損害金の支払いを求めることもできません。

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