定期借家契約


  定期借家制度が導入されて 5年が経過しましたが、一般の賃貸物件への導入実績はまだまだの水準のようです。その原因は「入居者に敬遠されて入居率が下がるのではないか」「賃料を下げなければならないと聞いたことがある」といったオーナーの不安によるものが大きいようです。
今月から数回に分けて、定期借家権の活用法とメリットをご紹介していきたいと思います。

  
その@「滞納対策」
 定期借家の最大のメリットは、不良入居者を退去させることができるということです。したがって、定期借家契約は滞納対策で最も顕著に効果を発揮します。
 定期借家契約によって滞納率を限りなくゼロに近づけることができた成功事例も紹介されています。
以前は滞納した上に居座る入居者がいたため、家賃回収と立ち退きに手を焼いていましたが、契約期間2年間の定期借家契約を導入した現在は、そんな苦労は昔話になりつつある、と報告しています。
「支払日に振込みが遅れるケースはあっても、翌月の半ばまでにはすべて回収できる。滞納が続けば再契約を拒否することもあるので、入居者側は意識的に早く支払うようになる」のだそうです。
 定期借家契約は、契約書に再契約が拒否される場合の項目が記されています。契約時から滞納に対してクギをさしておくことで、入居者の側もいい意味で緊張を保てるわけです。

普通借家契約では、滞納が発生してもなかなか入居者を追い出せないところが泣き所です。明け渡しの裁判を起こせば、6ヶ月程度の時間がかかり、弁護士費用等の経費も必要です。ラーメン一杯の無銭飲食でも罪になるのに、家賃滞納は簡単に解決することができません。これらのリスクを定期借家ならば回避できるというわけです。
 さて、定期借家契約は、再契約できるかによって2つの種類に分類できます。1つは、契約期間終了後に再び契約できる「再契約型」です。

一般の賃貸借契約の変わりに利用される場合、契約期間は1年または2年が一般的です。この再契約型が、滞納対策に非常に効果的なわけです。
 再契約ができない「非再契約型」はさらに「確定型」と「予定型」に分かれます。「確定型」とは、留守宅を一時的に賃貸に回すリロケーション物件などに用いられます。例えば、海外赴任中に自宅を賃貸する場合、 4年後に帰国する予定があるなら契約期間を4年間とすることができます。期限がくれば契約は終了し、「正当事由」を問われることもありません。一方の「予定型」は建て替えなどの予定がある場合に利用します。
 いずれにしても、契約方法としての定期借家契約に変わりはありません。大切なことは、再契約型ならば普通賃貸借契約と同様、再契約して入居を続けることができるということです。不良入居者は排除されていくので住みやすい環境が整い、入居者にとってもメリットがあります。その点を、契約者に対して説明することが定期借家契約導入の鍵になります。

 次回は「不良入居者の追い出し」です。その後も「ペット可物件」「保証人不要」「マンスリー」などへの活用法をご紹介していく予定です。



〜定期借家権の記念シンポジウム。「正当事由の見直しを」〜

定期借家推進協議会は3月9日、定期借家権スタート5年を記念して「定期借家の日」シンポジウムを開きました。基調講演では「正当事由制度」について、「この制度により、家主がいわゆる『住宅弱者』の入居を拒否することにつながっている」と同制度を原因とした建物所有者の貸し渋りを問題視しました。



また、借家人に明け渡しを要求する場合、多額の立退き料などが発生してしまうことから、「いつまで住み続けるか予想しにくいファミリー向けではなく、どうしても単身者向け賃貸を供給してしまう傾向になる」と広いファミリー向けの住宅が供給されにくくなる原因でもあると言及しました。そこで、昨年同協議会が提言したように、老朽化による建て替えなども正当事由として認め、その場合は立退き料も不要とするよう改正すべきだとしました。

更に、借家人が生きている限り存続し、死亡したときに終了する「終身建物賃貸借制度(終身借家制度)」を利用することで、「若いうちは定期借家制度を利用してその時々のライフスタイルに合わせた住み替えをし、高齢になったら『終の棲家』としてこの制度を利用することで、建物の所有から利用≠ニいう道筋ができる」と語りました。
つづいての専門家によるパネルディスカッションでは、中心的な論点である「賃借人の中途解約権の廃止の是非」について議論が行われました。

主な意見としては、「中途解約権の条項があるため、家主は割安な家賃を設定しにくくなっている」。「中途解約権を認めてもよいが、強行規定である必要はない。借家人が得する≠ニ納得して結ぶ契約を禁止する必要はまったくない」。「借家人は、長期契約による家賃のディスカウントという利益を受けておきながら、借家人自身の事情変更を家主に負担させる中途解約権のあり方は非常に問題がある」。
「仮に、中途解約しなければならなくなった場合については、借家人が、残りの権利を譲渡、転貸する方法などで対処すればよい。次の成約までの空白期間や、次の借家人との賃料差額分を補填することでも対処できる」。と、中途解約権の強行規定を法的に改正すべきであると語りました。


Q 定期借家契約にすると、入居者から敬遠されて入居率が下がったりしませんか。

A ポイントは、いかに入居者に対して正しい説明ができるかどうかにあります。再契約型ならば、契約が終了しても再契約すれば入居し続けられること、ルール違反がない限り原則的に再契約可能であること、ルールを破って近隣や他の入居者に迷惑をかける「嫌われ者」入居者が居座らないので住みやすくなることなどを納得してもらえばいいわけです。定期借家契約はオーナーだけにメリットがあり入居者にとっては不利だ、という誤った認識を、オーナーと不動産業者がまず取り払うことです。

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