一生懸命になるということB 今回は、あるオーナー向けの講演内容を本誌用にまとめたものをお届けします。必ずしも全てのオーナーに当てはまる内容ではありませんが、一般的な考え方として参考にしてくだい。 感動の三段跳び 不動産業者では、入居希望者を物件に案内するときに「お客様を3回感動させよ」と指導したりします。案内した物件を気に入っていただくために、お客様を3つのポイントで納得させるわけです。 でもこれは、新規のお客様に限らず、いま住んでいる入居者にも、同じく感動してもらいたいポイントなのです。 感動の1回目は物件の外観を見せたとき、です。 まず、気の利いた営業担当者なら、物件の全景が良く見えるところに車を停めてお客様を下ろします。そして「こちらの物件です」と紹介します。お客様は、綺麗で見栄えの良い外観を見て「お、いい物件だな」と思い、期待が膨らむわけです。 今そこに住んでいる人にとっても必要性は同じで、仕事帰りにいつも外観を見ているわけですから、「いい物件に住んでるな」と思うか「いつか脱出したい」と考えるかは大きな問題です。 そのために、物件の外観にいつも気を配る必要があります。外壁が吹き付けなら、10年以内の周期で塗り替えたいものです。費用の面を考えるなら、正面だけ塗り替える、一部だけタイルを貼ってグレードアップする、という方法もあります。花壇やプランターに花を植えるとか、ライトアップするとか、イルミネーションで飾るとか、比較的費用をかけないで、いつも手入れされている、という印象を与えることは大切です。 2回目に与える感動は、エントランスと通路・階段を見せたときです。 ピッカピカに磨きこまた床や清潔感が漂っている事が大切です。自転車が氾濫していたり、郵便受けが汚いとガッカリしてしまうでしょう。人の目線は7割以上が床にいくと言われています。「クリーン」は当たり前で「ビューティフル」でなければ、という精神が重要ですね。エントランスはご自宅の玄関だと考えてはいかがでしょうか。 3つ目は部屋に入ったときの感動です。 例えば、大切なお客様をお迎えするときはどうしますか? 普段ちらかしてる部屋でも綺麗に片づけるはずですね。花を飾ったりもすると思います。貸室をお客様に見せるというのは、それと同じではないでしょうか。ほこりが積もった、変な臭いのするような、不快な状態を見せられて気に入るわけがありません。清潔感、明るさ、広さをできるだけ演出する必要があります。スリッパ、芳香剤、花一輪など、さりげないおもてなしの気持ちが大切だと思います。 現在の入居者にとっても、外観とエントランスや通路が、見栄え良く清潔に維持されている事は、永く住みつづける為の重要なポイントです。掃除はオーナー自身が行えば費用はかかりません。一所懸命に経営するということは、そういうことではないでしょうか。どうしても、時間が無い、体力的に無理、となれば、初めて外注となり経費が発生するわけです。 皆さんが旅行に行く際に旅館を選ぶとき、まずパンフレット等を見て決めるでしょう。そして現地に着いて外観を見たときに、“期待はずれ”か“大いに期待できる”かを判断すると思います。「あ、この旅館は玄関も綺麗に掃除されているし、良さそうだな」とか考えますよね。次にロビーを見て判断します。そして最後に部屋です。 すべてに満足すれば、もう一度泊まりに来たいと思うでしょう。 入居者がこの賃貸住宅に住み続けたいと考えるのも同じ事です。 コンビニの経営と比べてみれば もともと所有していた土地に5000万円かけて賃貸住宅を建てたとします。5000万円の資本を投下して事業を始めたわけです。資本金5000万円の事業というのは大した規模です。不動産会社の場合、資本金1000万円が圧倒的に多いですから。 もう一方、同じく所有していた土地に建物を建て、加盟金とオープン費用合わせて5000万円をかけ、コンビニエンスストアを始めたとします。これも同じく資本を5000万円投下して開始した事業です。 コンビニのオーナーは朝から晩まで、汗水垂らして働くでしょう。24時間、交代しながらも、気の休まるヒマもありません。それだけ一所懸命に働いても、ライバルに負けて閉店の憂き目をみる可能性があるのが現代です。年収も、800万円〜1000万円もとれたら良いほうではないでしょうか(コンビニの経営をしたことがないので、正確な数字は分からないのですが)。 それと比べてみると、同じ5000万円の投資で始めた商売ですが、賃貸住宅の空室というのは、まだ解決策が単純なのではないでしょうか。賃貸住宅のオーナーは、賃貸経営の仕事で、朝から晩まで働くことはありませんから。 一所懸命にやれば、賃貸経営を取り巻く問題の解決策は多いと思います。 ライバルに負けない「競争力」をつけよう オーナーの貸室に、お客様である入居者を募集しようとするときに、必ず同じような条件で募集しているライバル物件が何件かあるはずです。 お客様は、オーナーとライバルの貸室を見比べて、どちらにするか決めるわけです。 ですから、まず、ライバルに負けない競争力をつけることが大切です。そのために、ライバルを研究する必要があります。 まず、オーナーと同じ客層の賃貸住宅を、一度は見て回ってください。同じような間取り、同じ価格帯の物件です。不動産会社に教えてもらうことも出来るし、ネットや雑誌で探すこともできます。 外や中が清潔に保たれていたり、伝言板が有効に使われていたり、花々が綺麗に咲いていたり、セキュリティーに気配りされていたり、真似できるところは是非したいものです。オーナーの刺激にもなります。 「そんな面倒なことを」と言うかもしれませんが、ライバルの多くがオーナーの物件より優れていて、価格も同程度だったら、お客様から選んでいただくことは困難となってしまいます。 昔、どこかの都市で、大手スーパーの大型店が角を突き合わすように、すぐ近くに出店したことがあります。 スーパーAの食品売場に、いつも朝一番で来店する客がいました。「おはようございます」と言って、にこやかに堂々と入ってきて、売場を一巡して帰るのです。 スーパーAでも有名になったのですが、それは、ライバルの、スーパーBの店長だった、という話があります。毎朝、堂々とライバルを偵察に来ていたのですね。 ヤマダ電器は、コジマ電器やライバル企業の値付けをいつもチェックして価格を変えていますね。「○○さんより高い場合はお申し付けください」などと書いてあります。同じものを売るなら、安い方が売れる、という道理です。 商売を成功させるためには、ライバルに差をつける必要があります。 分譲マンションもライバルです。最近、3DKや3LDKのファミリー向け賃貸マンションが苦戦しています。理由の中で一番大きいのは、マンションを購入して出ていく人が多いからです。 例えば、8万円で貸しているマンションの場合、管理費も含めて85000円を毎月支払っています。同額を返済に回して住宅ローンを30年で借りると、今のような金利 1%だと2600万円が借りられます。金利が2%になっても2300万円借りることができます。 金利を3%で計算しても2000万円です。 80000万の家賃の賃貸マンションより、2000万円前半で買える中古の分譲マンションの方が、広さ・設備・立地・築年数で優れていたら、いつまでも家賃を払うより所有する方を選ぶ人がいるのは理解できますね。 もし「うちの賃貸マンションに住み続けるより買った方が得かな」と思えるようなら、家賃設定を検討してみる必要があります。 家賃の相場は、他の賃貸住宅だけでなく、分譲マンションの価格とも関わり合いがある、とうことです。ですから、ファミリー賃貸マンションを所有している場合は、チラシなどを集めて、50uのマンション60uのマンションが、いくらで売り出されているか、気にかける必要があるのです。 ご所有の賃貸住宅が2DKの場合でも影響を受けます。 いまの家賃にいくら足せばマンションが買えるのか、と考えますから。 競争力のある募集条件を ライバルに競争力で差をつけるとき、設備や間取を代えたり家賃 を下げることが思い浮かびますが、その前に「募集条件」を見直すという方法があります。 よくスーパーでは、298円とか6800円という値付けを見かけますね。300円より298円の方が安いと錯覚する心理を利用していることは誰でも知っていますが、スーパーはその値付けを続けています。 「たった2円の違い」と分かっても、やはり安く感じてしまう、そういう効果があるからです。 300円台と200円台の違いは大きいのです。 賃貸住宅の家賃でも、80000円より79000円の方が、1000円以上の安さを感じます。さすがに、79800円という家賃はわざとらしいですけど・・・・。 家賃80000円で共益費2000円より、家賃79000円で共益費3000円の方が、合計は同じですが、一瞬安く感じたりしませんか。 ネットで探すときに“7万円台”という条件で探すと家賃79000円の物件は表示されますが80000円は出てこない、ということもあります。 例えば、下の募集条件を見比べ てください。 --------------------------------------------- ・礼金2ヶ月で募集期間4ヶ月 ・礼金ゼロで募集期間2ヶ月 ・礼金ゼロとフリーレント2ヶ月で募集期間0ヶ月 --------------------------------------------- 3つとも、この条件で決まればオ ーナーの収入は同じです。 でも、三番目の条件の方が、お客様から見たときに格段に魅力的だと思います。 あるいは、次の募集条件を比較してみてください。 --------------------------------------------- ・礼金1ヶ月、敷金2ヶ月、仲介 手数料1ヶ月 計4ヶ月 ・礼金ゼロ、敷金ゼロ、仲介手数 料ゼロ --------------------------------------------- 上と下の条件で、オーナーの収入 は、下の方が2ヶ月分少ないですね(仲介手数料はオーナー負担とした場合です)。敷金は預り金なので収入ではありませんから。 とすれば、上の条件が下より、募集期間に2ヶ月以上かかれば、オーナーの収入は同じとなります。 お客様が感じるメリットは、格段に下の方が魅力的です。 どちらのケースも、募集期間が短くできるかがポイントですが、お客様が魅力を感じる条件の方が早く決まる可能性が高いことに、異論を挟む方はいないでしょう。 敷金を預からなくて家賃の滞納は大丈夫かという問題は、連帯保証制度を使って、家賃の貸し倒れ不安を補えば良いでしょう。 一時金が払えないような心配な入居者が入ってくるのではないか、という不安は、連帯保証制度を使うことと、審査をしっかり行うことでカバーする必要があります。 (次回へ) 横浜市 港南区 磯子区の不動産 |