7つの障害 @ 賃貸住宅のオーナーには“事業の障害となるもの”がいくつも待ち受けています。これは賃貸経営に限ったことではなく“事業”と名の付くものなら、必ず何らかの障害に見舞われるものです。その障害を乗り越えて、はじめて事業の成功があるわけですから。 今回はその障害のうち代表的なものを3つ取り上げて、対策を考えてみたいと思います。大切なのはその障害をできるだけ回避することと、被害を最小限度に食い止めるように尽くすことです。 [@空室の発生] [A賃料の低下] [B修繕費用の増加] 現在オーナーの頭を悩ます問題は、この3つが大半を占めています。 空室問題を解決するために賃料を下げる、あるいは賃料を下げたくなければ修繕費用をかける必要があります。つまり、この3つの問題は密接に関わっていて、ひとつひとつを切り離しては論じられない関係となっています。 そして、その中心にあるのが「空室問題」です。 ○空室を発生させないことが大切 空室を発生させない究極の方法は「退去させない」ことです。一度満室になった後で誰も退去しなければ空室は発生しません。実際にそんなことは不可能ですが、入居期間を永くすることは可能です。 例えば、30年の間に平均2年の入居期間だと15回の入退去が行われます。平均4年なら7〜8回、6年で5回です。 同じ30年なら入退去が少ない方が、賃料の低下を防げますし(賃料デフレの時代にあっては新たな募集の方が更新よりも賃料が下がります)、空室期間も少なく済みますし(空室になる回数が少ないのですから当然ですね)、オーナーが負担する原状回復費用もまた少なく済みます(回数に比例するのでこれも当然です)。 それでは入居期間を永くするにはどうすれば良いか。答えは一つ、借主(入居者)が満足して快適に暮らせる住環境を提供し続けることです。もちろん、賃料に見合ったレベルの、という前提がありますが。 「顧客満足を第一に考える」 商売を一生懸命に行っているサービス業ならどこでも行っていることです。 具体的にはまず、共用部分であるエントランス(入口)や階段、通路、駐車(輪)場、ゴミ置場、植え込みなどを、いつも綺麗に清潔に保つことです。誰でも自分が住む環境が綺麗であってほしい、と願うはずです。自分が所有する住宅ならば自己責任で清掃しますが、賃貸住宅はホテル・旅館と同じで、料金(家賃)の中にその費用も含まれていると考えられますから、意識するしないに関わらず、借主(入居者)はそれを求めています。 ホテルや旅館に泊まったとして、そこが汚く不衛生だったら、もう一度来ようとは誰も思わないのではないでしょうか? この旅館に何度も泊まりたい、と、このマンションに永く住みたい、というお客様の気持ちは同じものだと思います。 ただし「費用の増加」という別の問題もありますので、いたずらに経費をかけてはいけません。できればオーナー自ら愛情を込めて、というのが理想ですが、不可能ならば近所でパートさんをお願いするとか、低コストの清掃部隊を抱える不動産業者に頼んではいかがでしょうか。週1回の日常清掃の月額費用は賃料の2%を目安としたいところです。 さて一般的にサービスというものは、永く(多く)その提供を受けると料金が割引されたり内容が良くなったりします。シティホテルでも1ヶ月滞在すれば料金は一泊分×30日ではないはずです。酒屋さんも魚屋さんも、永く付き合えば無料で配達やご用聞きをしてくれます。支払いもツケがきいたりします。つまり「お得意さん」は優遇されるのが普通です。賃貸住宅においても、永く住み続けてもらうためには、永く住んだだけのメリットが与えられたらいいな、と思います。例えば、5年住んでくれたら畳を交換する、ウォシュレット・エアコンなどを付けてあげる、などです。昔の常識では考えられないでしょうが、貸家を事業と捉え、店子をお客様と見れば、有り得ない考え方ではないと思います。 ○空室が発生したあとの対策 空室が発生したあとは一日も早く次の借主を見つける努力を、不動産業者と力を合わせて行う必要がありますが、そのための項目を列挙してみます。 〔広告〕 雑誌、募集看板、業者の店頭告知と昔からの広告に加えて、一番効果が高いのはインターネットです。なるべく多くの賃貸情報サイト(ヤフー、ホームズ、アドパーク等)にオーナーの貸室が掲載されるように要望してください。綺麗な間取図と写真を一緒に掲載します。 また、他の不動産業者へ情報をオープンにすることも大切です。 〔募集条件〕 まず考えられるのは賃料を下げることです。近隣の同程度の物件の賃料ゾーンと比べ水準が高いのであれば、やはり是正しないと募集は難しいでしょう。物件レベルが一定でも相場そのものが下がっているのは確かな事実ですから。 しかし何でも賃料を下げればいい、というのはどうでしょうか? それ以外の募集条件を検討してみる必要があります。 同じ収入源でも礼金や敷引きなどの一時収入を減らすとか、最初の1〜2ヶ月間の賃料を無料にするとか(フリーレントともいう)。 借主にとっては入居時の費用が少なく済みますので魅力的です。 また、ペット飼育を許可するとか、高齢者、外国人、複数人で利用するルームシェア、家具付き、短期契約(マンスリー)など、顧客のターゲットを絞り込んだ賃貸条件を検討するのも一つの方法です。 〔リフォームの実施〕 もともと賃貸住宅にも投資が必要なのはご存じの通りです。借主に快適な住まいを提供し賃料水準を保つためです。賃料水準を保ち続ける努力をすることが大切なんだと思います。投資するためには一定の収入が必要ですし、収入を得るためには賃料水準を保つ必要があり、水準を保つためには投資が必要なのです。 そのために、予定していた額よりも多くの修繕費用がかかってしまうのは、ある程度は避けられないと思います。本当は新築時に、修繕費用の必要額が正しく見積もられ、そのための積み立てが行われていれば良かったのですが、今からでも、そういう考え方に基づいた経営に方向転換するべきでしょう。 以上、[空室の発生][賃料の低下][修繕費用の増加]について考えた訳ですが、最初に触れたようにこの3つは密接に関連していることが分かりました。 まとめてみますと、 [賃料の低下]に関しては、近隣の賃料相場の下落以上には不必要に下げないで、賃料水準を維持するために必要なことを優先すべきです。 [修繕費用の増加]に関しては、必要な経費をかけないと空室の長期化や賃料の低下をまねき、結果的に収入を減らして収益(この最大化が本来の賃貸経営の目的)を悪化させてしまうことを理解する必要があります。必要な費用は計画的にかける。無駄な費用の支出は回避することが大切です。 [空室の発生]に関しては、この3つの問題の扇の要のような位置づけと捉えることができます。発生を回避するための借主へのサービス強化と、長期化を防ぐための募集強化を不動産業者と二人三脚で行うことが大切です。 (残りの4つは次回) 鎌ヶ谷市の不動産情報 |