成功する賃貸経営


 
新設賃貸住宅の増加
 国土交通省の住宅着工統計によりますと、97年から4年連続して減少していた貸家の新設住宅戸数が01年から03年まで3年連続で増加に転じています。全国的には家賃相場の弱含みが続いているにもかかわらず、土地活用といえば今でも賃貸マンションなどの居住系が根強いのは、今後10年間は世帯数が増加し、需要が底堅いという見方があるからです。

    日本の総人口は2年後の2006年にピークとなりその後減少していきますが、世帯数は10年後の2014年まで増え続けると予想されています。小家族世帯の増加が賃貸需要を後押しする、というわけです。
また、商業系と比べて収益が安定しているという見方もあります。バブルの頃に坪8万円していたビルが、いまは2万5000円になっていますが、同じエリアの1Kアパートは当時も今も、それほど大きく変わっていない現実があります。

   このように、土地活用といえば今でも賃貸住宅が一番ですが、これからの賃貸住宅市場が、日本経済が成長して人口が増え続けていたときのような絶対的な“貸し手市場”ではないことも確かです。「貸してやる」という意識から「借りていただく」という入居者志向に転換しなければ競争に負けてしまうでしょう。この考え方は、新設される賃貸住宅に限らず、築年数を経た既存物件にも当てはまります。

コンセプトの明確化
 そうした状況を端的に表しているのが、賃貸住宅のコンセプトの明確化です。入居者ターゲットを絞り込んだ、ペットマンション、学生マンション、デザイナーズマンション(一流の建築家が設計したマンションで、外観・室内のカラーコーディネイトなどに重点を置いたデザイン性の高いトレンディなマンション、と説明されている)などが増えています。
最近では、これらのコンセプトがさらに複合化されてきており、デザイナーズマンションにセキュリティマンション(防犯性能の極めて高いマンション)の要素を採り入れたり、オール電化の高齢者向け優良賃貸住宅や、ペットと住めるマンスリーマンション(家具付きで短期間賃借できる)が作られたりしています。

入居者ニーズを満たす基本条件
   賃貸住宅の新設にしても大規模なリフォームにしても、これからの入居者ニーズを満たす基本条件を知ることは意味があります。特に新築ならばこの基本条件は100%クリアしていることが必須条件でしょう。築年数を経た既存物件の場合は、どれだけクリアしているかチェックして、リフォーム再生工事を行う際の参考事項にしてください。
まず[1Kタイプ]の基本条件は、[バス・トイレは別][フローリング床][8畳以上の部屋][室内の洗濯機置場][二口以上のコンロ]です。
つぎに[ファミリータイプ]としては、[広い部屋、2DKより1LDK、3DKより2LDK][陽当たり重視、開口部の広さ][玄関ホールが独立][広めのユニットバス、最低でも1216以上][独立した洗面・脱衣室]などが基本条件です。トイレのドアが直接ダイニングに面していないことも重要です。

   そしてタイプを問わず共通する条件として[エアコン][多めの収納][防犯面の強化][外観・外構工事による物件の格向上]などです。
これから新築・リフォームされる賃貸住宅に、いまだに[○DKという旧態依然のスタイル]が圧倒的に多いのは、作る側が入居者本位になりきれていないことが原因でしょう。

市場調査が基本

 そして、賃貸住宅の新設・リフォームで何より大切なのは市場調査です。このエリアで、どういう間取りならいくらの家賃が取れるかを徹底的に調査します。その予測収入から、投資金額の上限が決まります。ここでは、計画している事業の採算性を計る簡単な方法を2つご紹介します。

[100倍基準]
この基準は、予測収入が投資額に合うかどうか、簡単に計算するために用いられています。方法は、建築費単価(坪当たり)が月額賃料単価(坪当たり)の何倍となるかを計算します。その結果が100倍を越えてはならない、とする基準です。

   たとえば、月額賃料が70万円見込める計画で、建築面積が100坪だとします。
この坪当たりの月額賃料単価は、
700,000円÷100坪=7,000円 です。
この場合の建築費単価は坪当たり、
7,000円×100=700,000円を上限の目安とするのです。
鉄筋コンクリート造でギリギリの単価となります。

[投資収益率]
これは、初期投資額に対する年間賃料収入の割合で判断します。
上記の例では、年間賃料収入は、
700,000円×12ヶ月=8,400,000円。
これに対し初期投資額が、8,000万円とすると、
8,400,000円÷80,000,000円=10.5%なので、投資収益率10.5%となるわけです。
これは「表面利回り」とも言います。

維持・管理費も重要なポイント
   最後のポイントとして、初期投資額にばかり気を取られずに、10年間、20年間の収益力や維持・管理費にも目を向けましょう。
新築と言うだけで満室にすることは可能かもしれませんが、大切なのは長期にわたる収益です。決して、収入の多さではなく、支出を差し引いたあとの[収益]を多くすることが最大の目的のはずです。
初期投資額が安いにこしたことはありませんが、仮に建築コストが1割アップしても、競争力を将来にわたって維持できるのでしたら、そちらを選択すべきです。

以上、冒頭で述べたとおり、貸家の新築が増加しており、それは新しい賃貸需要を吸い上げていくでしょう。既存の賃貸住宅にとっては、家賃の値下げのみで対抗するには限界もあり得策ありません。
このレポートの“これからの賃貸住宅ニーズ”を参考に、賃貸経営での“収益の最大化”をぜひ目指してください。



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