一所懸命になるということ


 アメリカでは不動産の価値を、「そこがいくら稼ぎ出すか」で決めるそうです。年間1000万円の収入が得られるなら、利回り10%ととして1億円の価値がある、と考えます。
日本では、土地が坪単価いくらだから何千万円、建物は何千万円かかってるけど耐用年数の半分を過ぎたから何千万円で合計いくらとか、そんな計算をするのが普通でしょう。しかし、これからの賃貸住宅の価値は、いくら稼ぎ出すかで決まります。
土地と建物で1億円かかったとしても、700万円しか収入がないならその不動産の価値は7000万円です(利回り10%を基準にした場合ですが)。
去年は500万円の収入があったのに、今年は空室が発生し350万円しか無かったら、価値が5000万から3500万に下がったことになるのです。

 オーナーさんは、ご所有の賃貸住宅を売ることはないと思いますが、もし売るとしたらどれだけの価値があるか、常に考えることは大切なのではないでしょうか。
賃貸経営というのは、その価値を高めていくことだと思います。

■賃貸経営の目的は『空室対策』ですか?
 さて、賃貸経営の目的は空室対策でしょうか?
もし空室対策が目的なら方法は簡単で、家賃を下げれば空室は必ず埋まります。でも、それでは赤字になってしまいますから、空室対策は「手段」であって「目的」ではないことが分かります。まず原点に立ち帰って、賃貸経営の本来の目的を考えてみましょう。

 例えば、相続税対策で、賃貸経営を始めた方がおられると思います。その場合の賃貸経営の目的は税金対策ということでしょうか?
 大分前の話ですが、あるオーナーさんから賃貸マンションの募集を頼まれたことがあります。12戸のうちの4戸が半年以上も空いているので客付けしてほしいということでした。建物と貸室を案内してもらったら一般的な3DKですが、建築にお金がかかっているな、という印象でした。オーナーもお金がかかっていることを自慢げに話しています。
詳しく聞いたら、建築費が坪110万を超えているというので驚きました。相続税対策で建てたので、収支計算は二の次だったということです。それにしても坪110万円以上とは‥‥。

銀行と建築会社と設計士にいいようにされたという印象を受けました。建築面積が200坪少しくらいで建築費は2億数千万円。金利は5〜6%の時代ですから、全額ローンで建てたので、支払が月々100万円を超えています。オーナーさんが希望する家賃では高すぎて決まりそうもありません。その家賃で決まったとしても3戸以上が空くと、ローンが持ち出しになるということでした。4戸も空いているのですから尚更に大変です。

オーナーさんは、ローンを支払う原資が必要という事情を持ち出して、値下げには応じようとしません。他に土地を所有しているという話もあったので、売却してローンの一部を返済したら、という提案をしました。1億円を返せば支払い額は70万円を割り、経営が楽になることは誰でも分かります。
ローン金利という経費も、年間600万円も節約できるのです。しかし、聞き入れられず、募集させていただくこともありませんでした。

 このときに、賃貸経営は、キッカケが税金対策であれ、儲からなければダメだ、という思いを強くしました。賃貸経営の本来の目的は、しっかり利益を出すこと、つまり、「売上」から「経費」を差し引いた「収益」を多く残すことだと思います。
収益を多くするためには、算数の考えでいけば、「売上」を増やすか「経費」を削れば良い、ということになります。しかし経営はそんな単純ではなく、「経費」を削るとそれより「売上」が落ちたり、「売上」を上げようとしたら「売上」が上がった分より「経費」が増えたりして、結果「収益」を減らしてしまうこともあります。「売上」と「経費」の差が一番開くバランスが難しいのですね。これを「収益の最大化」と言い、賃貸経営の目的とはこれだと思います。

では、収益を上げるためにどうすれば良いか、答えはひとつ。お客様を大切にすること。お客様に喜ばれること。お客様に支持されること、です。

 例えばスーパーダイエーが苦しんいますが、元は大阪で「主婦の店ダイエー」という名前でオープンし、徹底した安売りで主婦の心を掴んで成長した企業です。いつしかお客様を見失い、忘れ、規模の拡大や多角化に走り、今日に至ったのではないでしょうか。
 日本のプロ野球を見てみると、ほとんどの球団に「お客様の為」という発想が見えません。巨人との試合を組みたいばかりに、チーム数を減らして、最初から1リーグありき、というパリーグの発想。
お客様を大切にしない経営は必ず行き詰まる、と思います。

■お部屋を貸すことに、一所懸命になってください。

 「自分の財産のことだから、一所懸命になるのは当たり前で、改めて言われるまでもない」と、多くのオーナーはおっしゃるかもしれません。本当にそうでしょうか?
この世で、オーナーさん以上に、賃貸経営に一所懸命になれる人は、他にはいません。
「不動産会社に任せているから、そちらが一所懸命になってくれないと困る」。
もっともなご意見です。もちろん不動産会社も一所懸命に行動しますが、そのためには「オーナーさんの一所懸命が不可欠なのです。

社長が一所懸命に事業のことを考えてない会社は伸びません。
賃貸経営も同じです。オーナーは社長さんですから、社長が一所懸命でない事業がうまくいくはずがない、と思います。
物件を預かる業者が、オーナー以上には一所懸命になれない、と言ったのはそういう意味です。
それでは、賃貸経営の何を一所懸命に行えば良いのか、続きは次号でお伝えしたいと思います。
 

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