東京都の賃貸住宅紛争防止条例のQ&A


10月1日から東京都で施行された「賃貸住宅紛争防止条例」。
都内に賃貸住宅を所有するオーナーには「待ったなし!」ですが、近県や大都市圏のオーナーも無関心ではいられない問題です。
すでに、神奈川・埼玉・千葉県の不動産業者には、契約時に借主に説明する内容の中で、「原状回復費用」について詳細に説明するように、との要望が発せられています。
その内容は、東京都の条例と同じです。違いは、罰則の有り無しだけ、と言っても言い過ぎではないでしょう。
この件については、いままで何回も報じてきましたが、今回はわかりやすく、Q&Aにしてお届けします。


Q 賃貸住宅防止条例とは何か?

A これは呼称名で、正式には「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」といいます。平成16年3月30日に都議会で可決されました。


Q 条例の内容は?

A 不動産業者が、都内にある居住用賃貸住宅を仲介するとき、借受予定者に対し契約前に、原状回復に関する費用負担の原則と特約などについて、書面で説明する事を義務付けた条例です。


Q 説明する事を義務付けられたのは家主でなく不動産業者ですか?

A そうです。あくまでも説明義務は、家主でなく不動産業者です。


Q 事業用物件(店舗・事務所など)も説明が必要ですか?

A 店舗・事務所等の事業用賃貸物件は、この条例による説明の必要はありません。


Q いつから説明しなければならないのですか?

A 平成16年10月1日以降に新規に契約する場合です(更新契約は説明の必要はありません)。


Q 何を説明するのですか?
A 借主に、退室時の原状回復費用の負担について、経年変化(時間の経過に伴って生じる損耗)や通常損耗(通常の使用に伴って生じる程度の損耗)は、貸主の負担であること。故意・過失、善管注意義務違反(他人のものを借りている場合、借主は、契約が終了し明け渡すまでの間、相当な注意を払って物件を使用する義務があり、これに反すること)による損耗は借主の負担であること。以上の一般原則通りでなくても、双方が合意すれば、特約を取り決める事ができること(この特約は、公序良俗に反したり、借地借家法・消費者契約法などに反した場合は無効となる)。


Q 借受予定者が説明を聞いて、特約について納得いかないと言った時は?
A 十分に協議して合意点を探ることです。それでも双方の合意が成立しないのであれば、契約を断念するしかないでしょう。


Q 説明しなかったときに、貸主に罰則はありますか?
A 貸主に罰則はありません。仲介する不動産業者が、都知事より指導及び勧告を受けます。


Q 特約を定めて合意したのに、なぜトラブルになるのですか?

A 当事者が特約の意味、内容を十分に理解し、納得していないことが主な原因です。


Q 契約書に署名しているのだから、理解・納得しているのではないですか?

A 一般的に裁判所は、情報や知識の乏しい消費者が署名した事実だけでは、理解・納得したとは認めないようです。その説明が具体的で、当人がこうむる不利益についても分かりやすく説明する事が必要です。


Q 貸主としては、どうすべきですか?

A 一般原則通り(経年変化・通常損耗は貸主負担)とするのが、トラブルの起きない方法であるのは間違いありません。貸主の費用負担が増えますが、その分を家賃に上乗せできるなら(増える負担分のすべてでなくても)、そのようにするのもひとつの方法です。家賃を上げたら募集が難しくなるから、今まで通りの負担(例えば、畳・襖・クリーニング・クロス費用の一部)を特約で求めよう、という考え方もありますが、今後、部屋を探すお客様は、原状回復費用負担の大きい物件は最初から検討しない、という行動に出ることも予想されます。むしろ、負担がないことをアピールしたほうが、入居が促進されるかもしれません。費用負担が増えるのは賃貸経営にとって困りますが、空き室をうめることが第一と考えます。


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