賃貸住宅のトラブル防止策を考えるH

    具体的な紛争解決策シリーズもあと2回となりました。 紛争を解決する方法は大きく分けて二通りあります。  話し合いで解決する・・・・「自主的解決」と、国家権力を活用する・・・・「法的解決」です。
今回は「自主的解決」について考えたいと思います。


示談による解決

 賃貸借契約の本質からいえば、賃貸人と賃借人とは相互に信頼関係を維持しながら、長期間住生活を快適に営むことを前提としています。従って、紛争は未然に防止することが最もその趣旨に沿っているし、仮に紛争が生じても、話し合いによって、穏やかに解決することが望ましいといえます。
 紛争は、「傷の浅いうちに処置する程効果がある」といわれます。これは、賃貸借に特に当てはまる言葉であるといえます。

残置物の処理

 賃借人がいなくなった部屋に残っている物があるときは、まず、連帯保証人なり、賃借人の親類の方を見つけ、その方に全部引き取ってもらうように依頼します。このときは、契約を解除することが前提となります。本当に契約解除できるか難かしいところですが、連帯保証人に全部引き取ってもらっていれば、解除の効力を争える可能性があります。また、残置物の処理について、賃貸人側の責任を問われる可能性は少なくなります。

 賃借人の両親や兄弟姉妹の場合は、「あなたの所に、賃借人の荷物を全部送りますがいいですか。それでは、全部引き取りました、全て私が責任をもちます、と一筆書いてください。」といって、それを書いてもらってから、荷物を全部送ればよいのです。完全にとはいえませんが、残置物の処理について責任を免れることができたと考えていいと思います。

内容証明

 内容証明は、具体的なしっかりした内容でなければなりません。払わなければ当然に解除する、とう文言は当然ですが、「いついつまでに支払わない場合は解除します」というだけでは不十分です。この書き方では、解除の日はいつなのか、本当に解除されたのかがわかりません。「いついつまでに支払わないときは、その期日の経過をもって当然に本契約を解除する」と書かなければなりません。わずかの書き方の違いのようですが、この契約が解除されて不法占拠になっているかどうかの違いとなります。

契約解除・明け渡し

1)目的をはっきりさせる
 「未払い賃料の回収もしたい。明渡しもさせたい。」というのが、大家さんの共通した気持ちでしょう。
 しかし、まず、何を目的するかを明確にしなければなりません。住み続けてもよいが賃料の回収をしたいのか、とにかく明け渡して欲しいのか、目的を立ててから、次の手段をとらなければなりません。

 支払い能力がないために生じたのですから、未払い賃料はどんどんたまっていきます。賃料の回収のみに固執していると、その間居座られていることになり、賃料の未払いだけが発生し続けることになります。また、裁判にかけて回収しようとしても、支払い能力がないので、費用の掛け倒れになってしまいます。契約を解除し、明渡しを実現しなければ、新しい賃借人を入居させることもできません。

2)契約の解除
 従って、賃料の未払いが続きだしたら、明渡しを念頭に置いて、契約の解除を進めるべきです。この場合の契約の解除は、債務不履行に基づくものですから、賃貸借契約に書いてなくてもできます。民法の債務不履行の規定に基づいて契約を解除する訳です。一定以上の滞納があれば、相当の催告の期間をおいて契約を解除する旨の通知をだした結果、その催告期間内に賃料の支払いがなければ、契約を解除することができます。その結果、契約解除後は、賃借人を不法占拠している状態において明渡しを進めます。

3)明渡し
 明渡しの方法として、裁判をせずに、賃貸人が部屋の鍵を換えて賃借人を部屋に入れなくするロックアウトとか、ひどいものになると中の物を出して他の場所に移動させるだけでなく、中の物を処分してしまうこともあります。しかし、鍵を賃借人に無断で交換する行為は、住居侵入や器物損壊の可能性がある違法な行為ですし、他人の物を無断で移動したり、処分する行為も当然ながら違法な行為です。逆に、賃借人から損害賠償の責任を追及される恐れがあります。 これを避けるには、法的な救済措置、つまり、裁判で判決を得るとか、即決和解や調停にかけて、債務名義という強制執行に必要な効力のある書面を取得し、それに基づいて強制執行をすることです。

 違法なことを行う場合は、常に刑事上および民事上の責任を覚悟しなければなりませんので、賃貸住宅の大家としてなすべきことではありません。
次回は法的解決についてです。



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