賃貸住宅のトラブル防止策を考える@

  今回から「アパート・マンション経営塾」は、賃貸住宅の紛争予防について、シリーズでお送りします。まず今月はエピローグから。

長期間続いた貸し手市場

  賃貸住宅の歴史は古く、江戸時代の江戸や大阪では賃貸住宅が庶民の住宅の大半を占めていました。戦前の東京や大阪でも特に下町では賃貸住宅が大きな比重を占めていました。戦後も、終戦直後からしばらく続いた住宅難、高度成長期の都市部への大量の人口移入などから、賃貸住宅の役割りは一層重要性を増してきました。

この間、旺盛な賃貸住宅の需要をバックに、賃料相場はバフル崩壊直後までほぼ一貫して右肩上がりで推移し、これまでの市場の慣行やルールは、賃貸人の立場が優位であることを前提に確立してきたのです。

借り手市場への転換

 しかし、平成3(1991)年生産緑地法が改正され、生産緑地に指定された以外の市街化区域内の農地について、固定資産税が宅地並課税とされることになり、農地の宅地としての活用の手段として賃貸住宅が大量に建てられました。

 翌年から供給過剰の状態に陥り、また、折からの景気の急速な後退も重なり、賃貸住宅市場は、それまでの貸し手市場から借り手市場へ転換が始まったのです。平成5(1993)年から、賃料の下落や礼金の減額など、大きな変化が生じます。また、原状回復の費用は賃借人がほとんど全額負担するのが通例でしたが、この市場の激変以来賃貸人が負担すべき範囲が徐々に拡大しつつあるのが現状です。

 このような従来の慣行やルールの変化が急速に進んでいるため、賃貸人が変化している現状をまだまだ十分理解し認識するに至っていない場合が多く、トラフルの一因となっています。

 一方、消費者の権利意識の高まりも見逃せません。「主張できることがあれば主張しよう」という意識の高まりです。この意識の高まりと市場の変化とが相まって賃貸住宅に関するトラブルが急増しています。

次回からは、この紛争内容とその未然防止策を考えます。
ご期待ください。






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