「空室対策を考える 〜お客様のニーズとウォンツをつかめ〜 引き続き、空き室対策についてご一緒に考えましょう。 慢性的な住宅不足で家賃が右肩上がりの時代には、長期に入居してもらうよりどんどん入れ替わったほうが家賃も上げやすく、利回りも上がると考えられていました。正当事由がない限りオーナーからの解約を認めない借地借家法もあったので、オーナーは学生や独身者向けの小型タイプをつくって回転を高める賃貸経営をしてきました。 しかし、今後は優良なお客様に長く入居してもらうことこそ、空室損失を最小限に抑えて賃貸経営を安定させることにつながります。そのためにはハード、ソフト両面から魅力ある環境を提供できるように知恵を絞る必要があります。 既存の賃貸住宅の場合は、建物のハードはある程度決まってしまっているので、ここでは、長く入居してもらうためのソフトを考えてみましょう。 コンセプトマンションの登場 賃貸住宅を住み替える理由は、結婚したり、子供が成長して手狭になったからとか、勤務先の移転や転勤で引っ越すといった不可抗力の原因のほか、隣近所の人間関係による住み替えも意外に多くみられます。分譲住宅と違って賃貸住宅には遮音性が低いことが多いため、上下階で生活習慣や生活時間が異なるとトラブルになりやすいようです。 こうしたトラブルを避けるには、生活時間の似た者同志や同好の士を集めるという方法があります。 たとえば、日当たりに難のある物件の場合、「昼間もよく眠れる静かな環境」と銘打って夜間勤務者にターゲットを絞り込むとか、バイクの駐輪場や作業空間がとれるようなら「バイク好き歓迎」といったように、コンセプトを明確に打ち出す方法もあります。生活時間の似た者同志や同好の士が集まることで、そこに良好なコミュニティがつくられ、見えない付加価値が高まり、定着率が高まる効果も期待できます。 また、空いた一室をコミュニティルームやプレイーム、アスレチックジム、共同の書斎や教室などに提供して、お客様の利便を図るという方法もあるでしょう。一室分の賃料は無くなりますが、これによって満室になり、家賃値上げが可能ならば十分にペイするはずです。 これらのアイディアは設計当初から織り込むことが最も理想的ですが、既存の賃貸住宅の付加価値を上げる方法としても有効なものはあります。賃貸経営はまさに今、知恵と工夫の時代を迎えているのです。 今人気のペット同居型マンションとは ペット同居型マンションはペット専用、ペットのためのマンションと言った方が正確です。既にあるペットマンションは、入居競争率70倍という人気です。全国から応募者が問い合わせてきています。立地は「駅から走って18分」という不便な場所なのですが、人気は抜群です。現在10棟100室以上建っていますが、すべて入居待ちという状況です。しかし、入居待ちしていても、なかなか入居はできません。何故なら一度入居した人がほとんど出ていかないからです。もっと言えば、ここより他にペットを連れて出て行く場所がないのです。よって、ペットマンションは長期安定、満室経営なのです。 ここは通常の家賃より高い設定なのですが、ニーズが高く、プレミアムがつく程です。このように、ペットマンションが大人気である理由は、ペットを飼っている人が泣いて喜ぶ、ペットが快適に暮らすための設備が十分整っているからです。 犬の足洗い場の「フットシャワー」、汚物処理の「ウンチダスト」、衛生的な外廊下、犬が飛び出さないための「ドックフェンス」、フローリングもペット対応型、ペット専用のシャワールーム、脱臭器の設備等々、人間とペットが共存、共生できる住環境が十分備えられているのです。また、ここの住人は飼い主としてのマナーのレベルも高く、地域と共生しています。 また、入居1年目、2年目と、お客様に定期的にメッセージカードやパースデイカードを送付しているオーナーもいます。お客様にとって生活に過度に干渉されるのはうっとうしいものですが、こうした節度あるコミュニケーションはうれしいものです。 賃貸住宅経営は大競争時代 賃貸住宅経営は21世紀に大競争時代を迎えます。今や賃貸住宅のライバルは賃貸住宅だけではありません。 地価下落、低金利の追い風に乗った分譲マンションであり、一戸建て住宅、定期借地権付住宅です。さらに定期借家権の導入により、いずれマイホームを貸すという、自宅の賃貸化も市場に参入してきます。 空室、家賃下落は避けられない状況です。といっても、これは自由主義経済社会では当然に起きる現象です。需要が多く供給の少ない時代は、「大家が店子に貸してあげる」というオーナーにとって良き時代でした。しかし、供給が過剰となれば、そんなのん気なことを言っている場合ではありません。「いずれ景気が良くなれば…」と考えている様では、効率の良い賃貸経営はできません。賃貸事業が片手間やサイドビジネスでできる時代は終わった、といっても言い過ぎではないと思います。大競争時代を迎えたという認識を肝に命じるべきです。オーナーは経営者になって下さい。 勝ち組と負け組に二極化する 家賃が下落し、空室が多くなる一方で、人気が集中し、お客様が並んで待つ、しかも家賃が上がる賃貸住宅が出現しています。ある郊外では外観、間取り、色使いが素晴らしく、まるでホテルかと思わせるような建物の賃貸住宅があります。これが賃貸かと驚くべきものが出現しました。「分譲よりも上」といっても過言ではりません。しかも貸料は相場並です。これでは周辺の賃貸住宅はたまりません。周りの賃貸住宅の入居者は、その素晴らしい建物に入居するまで待機しているかのようです。都心でも、デザイナーズマンションに人気が集中しています。インターネット時代では、そういった情報は入居者に瞬時に広まります。 家賃が下がるとか、空室率が増加するという話ではありません。人気のある建物にお客様が集中し、不人気な建物は家賃を下げても空室になってしまうのです。 オーナーは勉強し、経営者に。 大競争時代となれば、オーナーは勉強し、研究する経営者になって下さい。考えてみれば当然です。アパートを建てる投資額は仮に5,000万円だとします。通常の商売で5,000万円投資してお店を開店すれば、それこそ24時間、365日、神経を張りつめて働きます。 毎日の売上、仕入れ、経費、そしてお客様の動向、さらにはライバルの動向と、経営者は汗水を流して頑張ります。結果、不幸にも倒産、閉店ということもあり得ます。 アパートの経営者が商売人と同じ気持ちで頑張れば、大競争時代でも空室対策なんか何でもないことです。お客様を選ぶのではなく、「お客様」に選ばれるのです。家賃を払っていただき、ありがとうございますと頭を下げる姿勢があれば、成功することは間違いありません。お金をかけて建物や設備を立派にしろ、家賃を安くしろと言うのではありません。お客様に喜んで快適に暮らして頂ければ、という気持ちと姿勢があれば、賃貸住宅経営は必ず成功します。 さらにオーナーは勉強して下さい。人気物件があれば、すぐに見に行って下さい。管理業者の話しを聞いて、専門紙を読んで、市場を常に見ていて下さい。そして何かヒントになれば実行して下さい。勝ち組に入ったオーナーの方々はよく勉強して行動しています。この本では時々アメリカの賃貸住宅について取上げていますが、アメリカでは賃貸住宅経営はすでに「サービス業」の領域に達しています。お客様に快適に暮らしてもらうにはと常に考えています。 アメリカから学ぶ賃貸住宅経営 アメリカでは、郊外にガーデンスタイルの賃貸住宅が大量に供給されています。一戸当たり50u〜100uの中級の賃貸住宅が一団に200戸〜300戸単位で存在します。部屋の広さ、構造は勿論ですが注目すべき点は、環境の良さ、サービスの質が日本とは比べものにならない点です。それは天と地の開きがあります。 広い敷地の中に、プールやテニスコート、管理棟にはクラブハウス、24時間セキュリティー、場所によっては、朝食のサービスもあります。しかも、こうしたサービスはほとんど無料です。高齢者向けの賃貸住宅では、買い物の送り迎えまでしてくれます。まるでホテルで暮らすようなサービスを受けられるのです。だからと言って、家賃がべらぼうに高い訳ではありません。中級クラス程度です。まさに「リッチ&リーズナブル」を実現させています。この国では、設備・サービスが充実しているから家賃を高くしたのでは、他の賃貸住宅との競争に勝てないのです。 また、こうした施設・サービスは、大型賃貸住宅だからこそできることです。プールやテニスコート、花や植栽、クラブハウスでのサービス、セキュリティーは個人での費用角担では大きくなります。多くの人が共有することによってこそわずかな負担で済むのです。 アメリカでは、個人の地主が土地活用するという発想はありません。すべて投資家が投資してプロが経営するという仕組みになっています。不動産会社が土地を開発し建物を建て、お客様を募集し、家賃を確定させ、利回りを確保し、売価を決め、投資家に売却します。投資家は運営をプロパティマネージャー(管理人)に任せて、配当(家賃)をいかに受け取れるかということ、次にそれを売ることを考えるのです。 一方、プロパティマネージャー(管理するプロ)はいかに安定した収入を確保できるか、お客様に満足してもらえるかを常に考えるのです。「家賃−経費=利益÷投資額=利回り」の算式と同時に管理コストをいかに少なくするか、さらには建築費、土地の開発費のコストをいかに抑えるかなのです。まさに「経営」そのものです。スケールメリットがなければ、とてもできるものではあません。日本でもこうした「投資」行為として賃貸事業が成立するかどうかがこれからの大きなポイントになるでしょう。まさに資本と経営の分離です。アメリカにおける不動産投資の主役は一般投資家から集めた株式の資金によって不動産を購入し、株主は配当(家賃)を受け取る「リート」と言れるシステムですが、日本でも不動産投資が本格化するにはリートのような仕組みができ上がらればならないと思われます。 戸田市の不動産情報 |