「空室対策を考える
  〜建物外観と設備にコストをかける〜



引き続き、空き室対策についてご一緒に考えましょう。

建物を「お店」と心得るべし

 お店に入ったとき、商品にホコリが溜まっていたり、店内が乱雑だったりしたらどうでしょうか。一方、魅力的な店構えで、店内にも清潔感が漂い、センスのよい商品展示をしているお店があったとします。家主さんならどちらで買い物をするでしょうか。
 賃貸アパートや賃貸マンションも同じことではないでしょうか。お客様になったつもりで、ご自身のアパートやマンションをチェックしてみて下さい。お客様が物件を見にいくということは、条件面で絞り込まれ、その物件が有力候補となったとことを意味します。「契約まであと一歩」という段階なわけです。この時の印象が契約への大きな決め手になります。

 不動産会社の担当者に案内されて部屋を見にいったら、雑草は伸び放題、ポストの中には郵便物やゴミが突っ込まれ、部屋の中は空気がよどんでムッとするという状態であったとしたら、他の条件がよくても嫌になってしまうでしょう。
 いかにも何カ月も空いていたと分かるような物件を選ぶお客様はいません。生鮮食品と同様、賃貸アパートや賃貸マンションも「鮮度」が大切。たとえ1ヶ月、2ヶ月空室になっていたとしても、しっかりした空室管理を行なっいて、まるで昨日空いたばかりという印象を与えれば、入居の確率は高まります。

 また、常に共用部分の清掃や手入れが行き届いていれば、既存の入居者も自然に汚さないように気を配るようになります。建物の外まわりやエントランス、廊下などが清潔に保たれている建物にはきれい好きなお客様が集まり、見るからに荒れた印象の建物には、何故かだらしないお客様が増えるものです。日頃の賃貸管理の善し悪し、言い換えれば生活環境の善し悪しがお客様の質や生活習慣にまで影響を与え、家賃や資産価値を左右することになるのです。
 オーナーは自分の建物を自分の目で確かめることも重要です。

空室管理のポイント

〔外まわり、共用部分〕
・建物の周囲や1階専用庭のゴミや 雑草を取り除く。
・ポスト内の郵便物やゴミを取り除 く。周辺の環境や利便施設の変化を把握。(コンビニ店の開店など)
・駐輪場の整理。
〔室内〕
・営繕、故障部分がないか確認する。
 ・電気、ガス、水道設備の点検。
・定期的に風通しをする。
・徹底したクリーニングと消毒を行 なう。(クリーニング済み、消毒 済みラベルを貼る

クリーン(清潔)は当たり前ビューティフル(美しく)でなければ

 日本では未だ珍しいですが、非常に魅力的な外観の演出によって、常に入居待ちの物件があります。郊外のワンルームマンションですが、石を使った重厚な外観、植栽や彫刻を配した魅力的なアプローチ、夜間は庭や建物を美しくライトアップするなど、今までの賃貸住宅にない魅力を演出しています。
 このオーナーは「クリーンは当たり前、これからの賃貸住宅はビューティフルでなくては」という強い信念から、こうした賃貸住宅をシリーズ化して建てています。使っている素材もメンテナンスしやすく、歳月が経つほどに風合いを増すようなものを選んでいます。そして、それぞれの建物に異なるテーマ性を持たせ、地域の話題を呼んでいますす。
 ここまでは無理としても、既存の賃貸アパートや賃貸マンションでも外観や外構、エントランス回りの植栽など、共用部分に手を入れることによって全体の印象をかなり高めることができるはずです。

 また、目には見えないアピールポイント(通信回線を2回線とっているとか、壁が厚くて遮音性が高いなど)や、周辺の施設(コンビニ、スーパーなどの店舗、商店街、公共施設、学校、幼稚園、病院、公園など)の特徴や案内図など、お客様が知りたい情報を簡単なファイルにして備えておき、お客様が自由に持ち帰るようにしておくといった工夫も効果的です。これなどは少しパソコンを使える人ならば手作りでできるでしょう。

ライトアップされた建物

 あるオーナーはあるアパート見学会で見た建物の入口のライトアップを見て、「これだ!」と思いました。帰って早速、入口に植栽を施し、玄関をリフォームして、そして建物のライトアップをしてみました。すると、築15年の建物も夜になるとライトアップ効果により、味わいのある建物に見えました。2月の繁忙期には夕方から夜に見学するお客様から喜ばれ、2部屋はすぐに入居が決まりました。ライトアップの費用は少額ですす。建物をいかに魅力的にする努力をするかどうかが大事です。このオーナーは12月にはアパートの前にクリスマスツリーを飾りました。今やこのアパートは人気物件となり、空室の心配はほとんど無くなりました。

設備で差が開く

適切な設備投資が収益を生む

 新築物件と中古物件の人気の違いは、「設備」によるところがかなり大きいと言われています。一旦完成してしまうと、故障したり、壊れない限り、設備を取り替えないケースが多く見られますが、お客様の求める設備水準は年々上がっており、ニーズに応えられない物件は間違いなく淘汰されています。設備の取り替えやグレードアップにはコストがかかりますが、適切な再投資をしない限り空室率は上昇し、結局は大きな損失を招くことになります。
 たとえば、お客様のニーズの高い設備としては次のものが挙げられます。

〔標準設備として喜ばれるもの〕
・冷暖房設備
・セパレート型のバス、トイレ
・システムキッチン
・温水洗浄機能付き便座
・シャンプードレッサー
・駐輪場
・駐車場
・衛星放送アンテナ
・トランクルーム
・溶室乾燥機
・追焚機能付き風呂
・コンセントの数を増やす
・CATV

〔今後、ニースが高まるもの〕
・セキュリティシステム
・宅配ボックス
・インターネット用の専用通信回線
 もちろん学生用のワンルームマンションとファミリータイプでは、お客様が希望する設備も異なるので、それぞれのターゲットに合わせた設備の選択が必要です。

お客様の層によって異なる設備

 たとえば、入居期間が短い学生用の賃貸住宅では空調設備はもはや必須条件。「空調設備があれば家賃が高くとれる」という時代から、「空調設備がなければお客様が集まらない」という時代になっています。そのほか、一時期多かったバス・トイレが一体化したタイプも今では敬遠される傾向が強いので、できればセパレート型にリフォームしたいものです。
 また、男女別にみると、男性は衛星放送アンテナやインターネット専用通信回線、女性は宅配ボックスやセキュリティシステムを希望する傾向が強いようです。
 まとまった設備投資の資金が用意できない場合は、空調設備や給湯器をリースで揃え、リース代を経費として計上していくという方法も有効です。
 ー般的にいって、分譲住宅に比べて賃貸住宅の設備水準はかなり劣ります。オーナーもつくり手も「賃貸住宅だからこの程度でいいだろう」と考えていたためです。しかし、これから賃貸市場は淘汰の時代を迎えます。お客様に選ばれるよう、常に商品価値を高める努力が必要です。

浪費と経費の違いを知る

 あるオーナーは車を購入しようと思って貯めた300万円を、賃貸住宅の付加価値を上げるためのリフォームに充てました。それによって家賃を相場より5,000円上げることができた上、2部屋の空室も埋ったので、投資した300万円は2年で回収できました。自分の贅沢のために使うのは「浪費」ですが、収益の源である賃貸住宅に再投資するのは「経費」。大競争時代を生き抜くためには、こうした「経費」を使う経営感覚が必要です。

設備を充実させた成功事例

@車好き人間を集めて成功
 郊外の独身者向けアパートが総崩れする中で、相揚より2割程度高い家賃にも関わらず空室知らずのアパートがあります。このアパートも数年前までは半分近くが空室でした。しかし、数年前、アパートに隣接する畑を潰してオート洗車場を誘致し、アパート付設の駐車場も広げて屋根付きのカーポートや防犯用のセンサー照明などを整備したところ、車好きの若者に大人気となりました。たとえ空いても、車仲間の口コミですぐ埋まってしまうと言います。「車好きの息子が収入の大半を愛車につぎ込み、時間さえあれば洗車している様子を見てこのアイディアを考えついた」とは兼業農家のオーナーの弁。この成功を生かして、次は敷地の中央に駐車場を配置して、室内から愛車を眺められるような賃貸住宅を計画中です。

Aワンルームの−室を倉庫に
 一時期流行ったワンルームですが、「実際に住んでみると収納が少なくて暮らしにくい」と、最近ではメインターゲットだった若い世代にまでそっぼを向かれています。こうした不満を解消する方法として、空いたワンルームの一室をトランクルームに改造してはどうでしょうか。空いた室内に、戸数分の鍵付きで長尺タイプの収納庫を設置すれば、季節用品、スキーやスノーボード、サーフボードなど、収納に困っている道具の置き場として随分重宝されることでしょう。空室のまま放置すれば何の価値も生みませんが、こうして空室を利用してお客様の不満を解消すれば付加価値が高まり、他と差別化することができます。一室分の収益減と改造費用は短期的に見ればマイナスですが、今後の空室損失を最小限に抑える効果や利用料収入を加味すれば、生きた投資になるでしょう。

B素敵な内装で乙女心をつかむ
 お客様が入れ替わる度に内装に手を入れていても、その内容は業者に任せ切りで、現在のお客様の好みやニーズにフィットしているかどうかに気を配らないケースが大半です。資金面の問題で大がかりなリフォームができない場合も、原状回復費用にプラスアルファで大きな効果を上げることもできるはずです。
 たとえば、若い女性をターゲットに絞って内装を一新してはどうでしょう。壁面の腰から下を淡いピンク、腰上を上品な小花模様の壁紙に張り替えただけで薄暗く殺風景だった室内が明るく可憐なイメージに変わります。また、玄関の下駄箱は天井面までのロングタイプに変更して扉に鏡を貼れば、多くの女性が困っているブーツや靴の収納不足も解消され、鏡の効果で狭い玄関まわりも広く見えるでしょう。
 一歩進んだ原状回復工事が功を奏して、既存のお客様から「家賃が上がってもこの部屋に移りたい」という希望が出たケースもあります。空室発生をチャンスとして捉え、順繰りに室内を時代に合わせて一新し、建物全体の付加価値を高めていくという手もあるのです。

C外まわりでグレードアップ
 不動産業者に聞くと、お客様の第一印象は外観に左右されることが多いそうです。乱雑に放置された自転車や、手入れや掃除の行き届いていない外回りでは、部屋を見る前に嫌われてしまいます。あるケースでは屋根付きの自転車置き場を設置し、アプローチに植栽をして洒落た照明灯を設置しました。これだけで殺風景だった外観に雰囲気が出て、イメージはワンランクアップします。お客様にも大変喜ばれ、空室もすぐに埋まったと言います。
 既存物件の室内のリフォームはタイミングも工事にも制約がありますが、外回りならいつでもできますし、工事も比較的容易です。バス・トイレ・キッチンなどの水回り設備の取り替えに比べれば、コストも割安に済みますし、その割にリニューアル効果が高い部分です。賃貸物件の場合は外回りの環境まで整備されている物件が少ないことから、希少価値も高まることは間違いありません。



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