「空き室対策のアレコレ」


    アンケートによると、家主さんの悩みの第一位は大差で「空き室問題」です。今後、築年数が増すにしたがって、大きくなる心配事です。
家賃の考え方、入居者の条件、リフォームなど、色々考えてみました。

適正賃料は季節によって変わる

 通常の時期と賃貸ピーク時では需要と供給のバランスが異なるので適正賃料の相場も同じではありません。
 客観的なデータからみても賃貸住宅の需要のピークは進学や転勤の集中する1月から3月です。また最近ではファミリータイプの物件を中心に、9月から10月にかけてもう一度需要のピークが来ます。

 需要と供給のバランスからいって、需要が多い繁忙期は、高めの賃料設定をしても比較的短い期間で次の入居者が決まりやすいものです。中には家賃の交渉をしてくる入居希望者もありますが、他にたくさん入居希望者がいるのですから、割と相場の家賃でしかも短期間で決まることが多いのです。

 逆に需要の少ない6月から8月あたりだと、興味を持ってくれた人に確実に部屋を借りてもらうために、「ある程度の賃料ダウンも仕方がないか」と、賃料相場自体が弱含みになります。この繁忙期の賃料とそれ以外の賃料との間には、だいたい5〜10%前後の開きがあると考えていいようです。

定着したフリーレント

 家主さんにとって月々の賃料は少しでも高いにこしたことはありません。でも考えてみると、月々の賃料を高くしても、それで空室期間が長引いたのではかえって損なケースも出てきます。繁忙期以外なら多少賃料を低めにしても、1日でも早く入居してもらった方が家主さんにとっても得な場合もあります。

 納得できる範囲で賃料を低めに設定し空室期間を短くするのがいいのか、それとも適正賃料の範囲でぎりぎり高めの賃料設定にし、若干の空室期間は許容するのが得策かは、先に見たように、募集の時期が繁忙期かどうかでも変わってきます。
 蛇足かもしれませんが、賃料を下げる際にも月々の賃料を下げるのではなく、「住居期間のトータル賃料」という考え方から、いわゆるフリーレントの形で何カ月分かをタダにする方法もあります,

 入居の一定期間(1〜2カ月が多い)賃料をタダにするこの「フリーレント」はここ数年ほどでかなり定着してきましたが、今後は定期借家権と併用して採用されることが考えられます。

入居者募集条件を見直す

 入居条件を見直すといっても、いわゆる「入居者の審査基準」まで甘くしてしまったのでは、入居中にトラブル発生の確率が上がるなど、オーナーにとってリスクが大きすぎます。そこで注目したいのが「ペット禁止」から「ペット可」などの募集条件変更です。
 ある調査によれば賃貸住宅入居者の約4割が「ペットを飼いたい」と考えているといいます。それに対して「ペット可」の賃貸住宅ははるかに少ないので、「ペット可」にする効果は、予想以上のものがあります。

 従来「ペット禁止」にしてきたオーナーは「部屋が汚れる」「声や臭いが迷惑」などの理由を挙げますが、その気になって対策を立てれば、解決可能な問題がほとんどです。実際、新築物件ではペットの洗い場を戸外に設けたり、傷の付きにくい材質の床にしたり壁クロスを壁の下半分に張り、汚れた場合にはそこだけ張り替えられるようにするなど、ペット対応にしたものがあり、予約待ちが出ているほどです。

 ペット同様、それまでの「ピアノ禁止」を「ピアノ可」にする場合も鉄筋コンクリートのマンションであれば、床の強度っも隣戸への騒音もそれほど心配することはなさそうです。問題は、すでに「ペット禁止」「ピアノ禁止」の契約で入居している人たちへの事前説明をしっかり行っておくことです。あらかじめ入居者にアンケートをとって意見を確認しておくのもよいでしょう。また隣戸はもちろん、近隣の住民からも苦情がでないようにペットの飼育規則(大型犬は飼わない、ベランダに大小屋を置かない)などやピアノ使用規則(演奏時間は午前9時から午後6時まで、グランドピアノは禁止)などについて具体的に取り決めをすることも重要です。

 また、2DKなどの広めの物件では、「同居は夫婦、兄弟姉妹以外不可」を「友人同士の同居も可」にして効果を上げているケースもあります。学生同士の同居の場合は契約者だけでなく同居人の親にも連帯保証人になってもらうと、トラブルがより少なくなるのです。

空き室対策の基本は告知方法

 さて、空き室対策で特に重要な、不動産業者の空室告知方法を考えてみましょう。もっとも基本的な募集方法といえるのが不動産会社の店頭に「案内図面」を貼り付ける方法です。
 入居希望者の視覚に直接アピールする方法としては、物件に看板をかけて「入居者募集中」であることを示すことがよく使われています。また途中で空室ができたような場合は、人目に触れやすい側の窓やベランダに「空室あり」の看板をかける業者もあります。

 店頭に貼り付けるにしろ、看板をつけるにしろ、それを目にする人の数は近くを通りかかった人に限られいます。「最寄駅の前後2駅ぐらいに住んでいる人を対象に入居者募集をする」つまり同じ地域の中で移動する人か、その人からの紹介客を探すには、もっとも効果的な方法でしょう。

 データによれば地域差はあるものの、同じ地域内で探す人は来店客の半分以上を占めているといいます。もっともっと地域内に対するアピールを強化してもよいのではないでしようか。家主さんとしては、所有する賃貸物件の地域に、募集告知を熱心にしている不動産業者は頼りになるということです。

 インターネットはまだまだ我々には馴染みが薄い、と思っている方が多いでしょうが、賃貸の部屋探しの現場では決してそんなことはないのです。実に多くの人がインターネットを通じて発信されている賃貸情報を見ています。ただ興味本位で見ているのではなく、部屋を探すときはインターネットを覗いて、いい物件があればメールで問い合わせる、といったことが当たり前になっています。

 不動産業者の中でもこうしたインターネットを利用するところが増えています。自社でホームページをインターネット上に開設し、賃貸情報を公開している会社もあります。今後は賃貸住宅の告知にも、インターネットは欠かせなくなりました。

リフォームで空き室を解消する

 空室を減らすのに効果のある設備としては、シングルタイプではガスコンロと床のフローリング仕上げなどがあります。
 シングルタイプの入居希望者の自炊率は決して高くはないのですが、キッチンのコンロの熱源は、圧倒的にガスが人気です。給湯にガスを利用しているようなケースでは、ガスコンロへの変更も考えてみたいものです。

 床のフローリング仕上げは、特に女性に人気です。部屋が空いた際のクリーニングや補修と同時にカーペットをフローリングにするといった形で競争力アップを計った成功例もあります。
 ファミリータイプで空室を減らすのに効果がある設備として注目したいのは追焚き機能付きの風呂です。家族の人数が多く入浴時間がまちまちになりがちなファミリータイプの入居希望者にとって「風呂の追焚き機能」は必須設備です。以前追焚き機能付きの風呂のある部屋に住んだことのある人の約40%が「追焚き機能付きの風呂のある部屋でなければ借りたくない」と答えています。

 給湯設備の修理が必要になった際などに、思い切って「追焚き機能付き」にすればファミリー層へのアピール度が跳ね上がること請け合いです。
 そのほか、ちょっとした工夫でファミリー層ウケしそうなのが、玄関ホールの確保です。ドアを開けると台所やダイニングが丸見えという間取りは嫌いという人が多いですが、後から玄関ホールを増築するといった大掛かりな工事をしなくても、アコーデオンカーテンなどを付けておくだけでも随分と違います。

 また、カーペットからフローリングへの変更や、風呂の追焚き機能の追加などは、エアコンの設置ほど簡単にはできません。当然、費用もかなりかかりますから、築5年、10年といった大がかりなメンテナンスが必要となる時期に、空室対策だけでなく、ご自分のアパート・マンションの価値を下げない(賃料低下を抑える)ために行うのも方法でしょう。



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