「賃貸管理を委託するには」


     昭和30年代にテレビを買うとき、どこのメーカーのどの商品を選ぶという判断基準はありませんでした。とにかくプロレスやニュースが見られれば良かったのです。しかし何年も前からテレビを選ぶ基準は、デザインや価格・機能・ブランドやトレンド等、“ただ映ればいい”から、“自分の特別な要望に合致したもの”へと変化しています。市場が成熟したのです。

    不動産業者が大家さん向けに提供している“商品”として「賃貸住宅の管理委託業務」がありますが、大家さんはこの商品をどんな基準で選んでいるでしょうか。すくなくとも少し前までは、昭和30年代のテレビのように「内容はどこも同じだろう」「ただ管理をしてもらえばいい」という程度の選択基準ではなかったでしょうか。しかしこの業界も成熟しはじめています。同じような管理メニューを掲げていても、内容に大きな差があります。消費者が商品の内容を吟味して選ぶように、大家さんもご自分の目的にあった管理の質とメニューをお選びください。

 大家さんが賃貸住宅の管理を委託するときに不動産業者に求めるべき大事なポイントは何でしょうか。以下に項目を並べてみます。
  @建物・借主の資料管理
  A満室の維持
  B不良入居者への対応
  C建物を維持するための修繕提案


建物・借主の資料管理

 私の知っている業者さんが管理委託を受けたときの話ですが、それまで管理を任されていた業者から資料を譲り受けなければならないのに、その管理のズサンさに驚いたことがあります。 各室の賃貸借契約書や入居申込書などの資料が全室分揃わないのです。鍵もオリジナルでなくコピーしたものが混じっていたり、よくこんなもので管理していたな、という感じでした。

 1000戸ほど管理しているまあまあ名の通った業者ですが、実体はこんなものかとあきれた覚えがあります。新しく管理を引き受けた業者さんは戸別に訪問し、家族構成、勤務先、賃料の支払い状況などをひとつひとつ確認して、資料を一から作り直してスタートしました。

 建物に関する資料(図面類・各工事を担当した業者名・設備の保守点検記録・修繕計画等)と借主の資料(入居申込書・賃貸借契約書・住民票等の書類・クレームや連絡の記録等)、貸室の資料(各室のリフォーム記録・募集用図面・写真類・鍵等)は、いつでも取り出せる状態でしっかり管理されている業者を選びたいものです。

満室をいかに維持するか

 目下大家さんの最大の関心事は空き室を長期に発生させないこと、でしょう。そのためにどのような努力をしているかがポイントです。
 貸室は大家さんの大事な“商品”ですが、空き室の間はいつでも住みたくなるような状態に保っておくことが大切です。八百屋さんの店先に並んでいる野菜がしおれていたら、誰も買おうとはしないのと同じですね。たまに、次の入居者が決まってからリフォームを行う、という話を耳にしますが、前の入居者の生活跡を見て「住みたい」という欲求は湧きにくいと思います。
部屋が空いたらすぐにリフォームをしましょう。

 最近のお客さんは賃貸住宅に当然のように清潔感をもとめます。4〜5年経った壁のクロスは、多くの人が「そのままでは住みたくない」と言います。かといってその費用をすべて前の借主に負担させるのは無理な情勢ですが、部分的になら可能なケースも多いものです。契約時に負担割合をしっかり納得してもらい、退去時に立ち会って費用負担部分を承諾させる。そこのところの行司役をしっかりやれる業者は、いつでも決まりやすいようにお部屋を維持できます。

 “適正賃料の提案”も大切な職務のひとつです。大家さんは賃料の値下げは基本的に受け入れがたいことですが、付近の賃料動向、入居希望者のニーズを一番よく知っているのは不動産業者ですから、一日も早く申し込みを受けるために必要と判断したら、躊躇なく提案してもらいたいものです。下げる下げないは大家さんの判断ですが、考えるために必要なデータや専門的意見は、いつも的確にほしいものです。

 また、入居募集の告知にどれだけの媒体を活用しているでしょうか。現地の看板やちらし・インターネット・賃貸情報誌・店舗間のネットワーク・大学や法人とのパイプ等、多くの方法をもっている業者に任せたいものです。

不良入居者への対応

 家賃の滞納は困った問題です。滞納処理は最初の1ヶ月間が一番大切な時期なのですが、この“初期督促”をこまめに行える業者は以外と多くありません。早めに的確な対応をすることが最も確実な解決方法です。そして、法的手続きが必要と判断すれば、毅然と行う知識と行動力が望まれます。
 共同住宅のルールが守れない入居者へも同様な対応が必要です。

建物を維持するための修繕提案

 建物は適切な修繕費用を投資することによって、寿命が延び、高めの家賃を維持できます。修繕計画を立てることはもちろんですが、常に現地を巡回点検することにより、その時期を的確に判断できます。たとえば外壁は8〜10年に、鉄部のペイントは3〜5年に一度は塗り替え時期です。給湯器やエアコンも8〜10年が替え時です。
 いつも現場を点検し、お客様の声を聞いているプロフェッショナルが、大家さんにとって最も費用対効果のある修繕時期を提案できるのです。

 管理メニューは一緒でも、中身は各社で違うものです。本物の管理を実践する業者をどうかお選びください。


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