「アパートを建て替えよう@」


古くなって採算も悪化しているから建て替えたいと思っても、入居者の立ち退きがスムーズに行くか、長期に渡って満室が維持できるかなど不安も多いことと思います。そのため、まあこのままでいいかと、あきらめ顔の方が多いようです。しかし、それでも固定資産税・相続税が重くのしかかってきて、いずれ経営が立ち行かなくなるのは目に見えています。建て替えにあたっての問題点は何なのか、それを解決するにはどうしたらいいか、ご一緒に考えてみたいと思います。

何故建替えが必要か

 人気のない間取りや古くなった設備の築20年を超えるアパートは、一度退去者が出るとその補充が困難で、そのため賃料の引き上げもままならず、収益は悪化する一方です。その一方で建物は老巧化の一途をたどり、修繕費は高くなる。まさに悪循環の泥沼です。

    あるデータによりますと、20年以上前のアパートの平均空き室率は26.0%もの高率に達しています。これに対して8年前以降に建築された物件では、4.5%の空き室に留まっています。実に5倍もの格差がついているわけです。
 この実態にさらに固定資産税が追い打ちをかけます。相続税の問題もあります。ローン返済、建物の償却がともに終了して、借財はなく、土地評価だけがそのまま残り、多額の相続税評価の元になってしまいます。

 「日本住宅総合センター」の調査で建て替え希望の割合をみますと、1975年以前に建築された物件では40.6%、ほぼ4割のオーナーが建て替え希望を持っています。老巧化アパートを持っている人のかなりの割合の人が建て替えを望んでいることが分かります。

 しかし、実際にはなかなか建て替えは進んでいないのが事実です。それは、立ち退き、賃料の動向などさまざまな面で不安があるからでしょう。果たして、それらの不安は本当に克服できない問題なのでしょうか。

入居者の立ち退きの問題をどう解決するか

 確かに居住者がいるアパートの建て替えを行うのは、簡単なことではありません。しかし、そうした困難を乗り越えて建て替えをした例は少なくありません。
 では、どのような点がポイントになるのか、またどのようにすればスムーズに事を運ぶことができるのか、問題




点を整理しながら、対応策を考えてみましょう。
 まず、建て替え成功の条件として次ぎの3つが上げられます。
 1.立退きを如何に問題なく完了させるか
 2.長期にわたって人気を維持する建物の計画
 3.そして建て替えへの強固な意志

なかでも強固な意志を持つことはもっとも重要な条件ということができます。「絶対に建てるんだ」という強い意志が第一条件というわけです。
 今は何とかやっていけるからいいというのではなく、5年後、10年後を見据えて、中長期的な視点でアパート経営をとらえる必要があります。

 では、具体的に建て替えの問題点を見ていく前に、建て替えを成功させるためのプロセスの概要を整理してみましょう。
流れはおおむる図@にあるような形になりますが、最初は建て替えを決意(@)したら、どのような建て替えを行うのか、事業計画を明確にすることから始めます(A)。やみくもに立ち退きを迫り、立派な建物を建てようと先走りすると、あとで交渉につまづいたり、収益性に問題が生じたりすることになります。

    アパート建築は一見すると、いかに建てるかというこが重要に思えます。つまり、工務店やハウスメーカーがこのプロジェクトの中心と考えられ勝ちです。しかし、大切なのはアパート経営ですから、いかに長い間安定的な収益を比較的楽に得ることができるかが、本来重要なはずです。この問題は、実は工務店もハウスメーカーも解決する術をもっていません。経験豊かな、不動産管理業者が必要になります。

    特に入居者の希望が多様化し、今までのありきたりの建物と管理では、新築の間しか満室にならないというようなことが実際に起きています。真に入居者の要望にあったアパートを企画するには、入居者と直に接している、入居者の動向を一番肌身に感じている、賃貸仲介管理業者が中心の一角に据えられるべきでしょう。 

    つぎに、まず立退きの問題をクリアしなければなりません(B)。その方法の詳細は次回に細かく見ますが、あまり性急になりすぎずに、じっくり時間をかけて立ち退きを実現するのがポイントになります。立ち退きは場合によっては1年、2年かけての長期の作戦になります。それだけに、建て替えを決意してすぐに実現できるというものではないから、相続などをにらんだ場合には、できるだけ早く着手しておく必要があります。

 さて、立退きが完了(C)したら、解体・建設に入ります(D)。当然、それと前後してある程度立退き完了の見通しが立ったら、建築計画の詳細設計を行い、資金面での手当も行っておく必要があります。
 無事解体・建設を行うことができれば、入居者の募集活動に入ります(E)。そして、実際に契約・家賃の徴収・管理が始まります(F)。これは、専門の賃貸管理業者に任せた方が良いでしょう。

 この建て替えの流れの中で、成否にかかわるもっとも大きな岐路にたつのが、立退きをうまく成功させることができるかどうかということでしょう。前の条件の一つでもある、建て替えへの強い意志が、この立退き問題の処理において最初に問われることになります。
次回は、立退きの問題を考えます。



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